「全員の顔が一番よく見えるところが・・・」 ~『耳の聞こえない人、オモロイやん!と思わず言っちゃう本』
今日は、前回のブログでとりあげたドラマ版「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」の放送日です。
そこで、関連する本として、次の本をご紹介します。
『耳の聞こえない人、オモロイやん!と思わず言っちゃう本』
(大谷邦郎・手話エンターテイメント発信団oioi、星湖舎、2019、税別1500円)
大阪の手話エンターテイメント発信団oioiさんの本です。
聴力の単位はデシベルを使い、その数値が高いほど聞こえにくい、といった知識も知ることができますが、本書の特徴はなんといっても当事者目線。
とっても楽しい本なのですが、当事者に対して、ちょっと聞きにくいことも思い切ってインタビューしちゃおう、といったノリが全開です。
当事者が語られることから僕らが気づかされることは、ほんとに多いです。
「こんなことがあった」と語られる話の数々に、驚かされること、必至です。
学校の中での出来事として紹介されていた次の話は、学校関係者として、特に覚えておきたいと思った話です。
・「これは聴覚障害者あるあるなんですけど、だいたい僕らを教室の一番前に座らせますよね。」
「だけど、それは意味がない。」
(p98)
少し聞こえにくいぐらいなら意味があるかもしれませんが、全く聞こえない状態に近い場合、口が動いているのを見てようやく、「今この人はしゃべっているんだ」と認識されるそうです。一番前の席だと、先生は板書をしながらしゃべることが多くて、しゃべっているかどうかが分からないし、クラスの誰かがしゃべっていても、一番前だとそのことに気づけないのだそう。
今、日本は国連から、通常学級の場の中で、インクルーシブ教育を進めるように、勧告を受けています。
通常学級の中で「耳の聞こえない人」も安心して授業を受けられるようにするには、こういった声にしっかりと耳を傾ける必要がありそうです。
なお、このお話をされているのはノブさんという方なのですが、ノブさんは就職後、会社で学校のときとは大違いの、合理的配慮を受けられているそうです。
具体的には、会議の時の座席の決定権はノブさんにあるのだとか。
「全員の顔が一番よく見えるところがノブさんの席になる」んですって。
(p105)
学校でも、そんなふうにしてくれていたら、ずいぶん助かっただろうな、と思いました。
本書の最後のほうには、別の方々による、学校でのいじめの話も出てきます。
「周囲の無理解がつらかった」という話も出てきます。
読んでいて、身につまされました。
勇気を出して語っていただいたこと、「本」のかたちにまとめていただいたことに感謝し、誰もが安心して通える学校をつくっていくために、活かしたいと思います。
みなさんも、ぜひ、読んでみてください。
『耳の聞こえない人、オモロイやん!と思わず言っちゃう本』
(大谷邦郎・手話エンターテイメント発信団oioi、星湖舎、2019、税別1500円)
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