「初めは自由に遊んでなれ親しむ」 ~孫泰蔵『冒険の書 AI時代のアンラーニング』その3
「学び」について、とことん追究していっている、にかとまです。
『冒険の書 AI時代のアンラーニング』の読書メモを続けます。
『冒険の書 AI時代のアンラーニング』
(孫 泰蔵、日経BP、2023/2、1760円)
過去記事はこちら→ 第1回 第2回
本書第1章は、「解き放とう」。
今回は、「縛りを解き放て!」という話から、参照します。(p62~)
・本当に変えなければならないものは
学校そのものではなく、私たち1人ひとりが
学校に対して求めているものや私たちの意識なのです。
(p68)
この話の前には、既存の小学校や中学校なんていらないのではないかという話が出てきて、ドキッとしました。
僕は、今の学校をなくした方がいいとは思いませんが、そのこと自体、縛られた考え方なのかもしれません。
学校に対して求めているものや意識を変えなければならないという意見には、賛成です。
また、その後に出てくる「スローな学びにしてくれ」(p71)という主張にも、賛成します。
その後の「基礎という神話」(p77)という主張が、おもしろかった。
下に引用します。
・なにかにたどりつく道は無限にある。
・「どれが基礎でどれが応用だという境目はない」
・「基礎から応用へ」と順番に学習させようという教育は、
そもそも人類の知恵のあり方と合っていない
(p79)
上の点については、まだけっこうもやもやしています。
僕の中に、難易度的に易しいものから難しいものへ、基礎的なものから応用的なものへ、という学習の順番が、しみついているのかもしれません。
一方で、
「なにを学ぶにしてもどんなルートを通ってもかまいませんし、そのルートは1人ひとりちがっていい」(p80)という主張には、素直に賛成できました。
それは、インクルーシブ教育における多様性の観点からです。
僕としては、「多様な学び方」はあっていいと思うし、一人ひとり違うということがもっと認められるべきだと思っているのです。
でも、その学び方の中には、やっぱり「基礎」とか「応用」とかいうものが、あるんじゃないかなあ、とも思っているのです。
「特別支援教育」においてよく言われる、「スモールステップ」という考え方が、僕に特にしみついていて、基礎から応用に少しずつ向かっていくことがいいと思えてならない、ということがあります。
ただ、本書も「基礎」自体をすべて否定しているわけではなく、その後の記述で
・「自分」が「基礎」だと思うことを徹底的にみがき上げることは、大いに意味がある
(p81)
ということも、書かれています。
「基礎」というものも、一人ひとり違うというとらえ方ですね。
そういうとらえ方をすると、これもまた多様性の観点から、うなずけるものはあります。
このあたりは、もやもやをひきずりながら、引き続き考えていきたいところです。
本書では、学習の順番として、「初めは自由に遊んでなれ親しむ」(p81)という主張が出てきます。
これについても、賛成です。
こういった、学習の順序に関わることは、「カリキュラム」とか「教育課程」と言われることです。
今、この「教育課程」のとらえ方を刷新する時代に来ているということは、ひしひしと感じています。
「初めは自由に遊んでなれ親しむ」というところからスタートすることには賛成だけれど、現行の学校制度の中で、それがどこまでできるかな、と思っているところはあります。
本書では、「理想」として、次のようなことが書かれています。
・「自由に遊んでいる中で、気がついたら学んでマスターしてしまっている」という状態が理想
・教師も「教える人」をやめて、「一緒に遊ぶ人」になればいい
(p82)
僕自身も、「遊び」と「学び」の融合をめざしてやってきたところはありますが、
これからの時代、ますますその両者の境界線をなくして、融合させていく時代がきたのかもしれません。
そもそも、「遊び」と「学び」を分けて考えてしまっているところ自体、考え方が古いのかも。
教師も共に遊び、共に遊ぶ中で、共に学ぶ。
たしかに、ひとつの、理想です。
第1章の最後まで行きたいので、あと、ちょっとだけ続きます。
第1章の最後は、「失敗する権利」という話です。
・「失敗を楽しみ、愛でる」という境地まで行くことができれば、
人生はとても豊かなものになる。
(p90)
「遊び」=「学び」という話と、この話は、つながっていると思いました。
遊びの中では、失敗は「試行錯誤」であり、そのプロセスこそが、楽しいのです。
学びにおいても、同じですね。
「失敗」を許さない教育は、どこか間違っている、と思いました。
最後の最後、第1章のラスト3行を引用して、終わります。
・もっと学びは自由でいいし、楽しくあるべきだ。
そのためには、「人には必ず失敗する権利がある」という思いを胸に、
いたずらにルールをつくることをやめ、
失敗から学べる環境をデザインすることが重要だ
(p92)
長くなりましたが、今回は、これでおわり!
まだ1章が終わったところです。
第2章は「秘密を解き明かそう」です。
では、また明日!!
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