デジタル社会のよき担い手を育てる ~『デジタル・シティズンシップ』
(写真はフリー素材。PhotoACのものです。)
金曜日に、ICTを使った教育について、若い人たちに話をすることになっています。
ここ2週間ほどかけて、その学習会のためのスライドを作っていました。
その中で、以下の本のタイトルになっている「デジタル・シティズンシップ」の話もするつもりです。
『デジタル・シティズンシップ ――コンピュータ1人1台時代の善き使い手をめざす学び』
(坂本 旬ら、大月書店、2020/12、1700円)
デジタル・シティズンシップ教育はデジタル社会のよき担い手を育てる教育であり、従来の日本の「情報モラル教育」とは異なるものです。
上の本を読むと、情報モラル教育からデジタルシティズンシップ教育への転換の必要性・違い・価値・方法がよく分かります。
たとえば、次のようなことが書かれています。
・デジタル・シティズンシップの教材は生徒に自分の意見を主張することの大切さを表現しているが、情報モラル教材にはそうした視点を見ることはできない。
(p7)
情報モラル教育とデジタル・シティズンシップ教育について、両方の教材を見比べた大学生は、次のような感想を抱いたそうです。
↓
・情報モラルの授業は<大人が>決めた約束を守ることを教えている
・「情報モラル」教材は「ソーシャルメディアは悪いものだと偏った思考を押しつける」
(p7)
あくまでも学生さんの感想ですが、従来の情報モラル教育は、そう思わせてしまうところがあるようです。
これからは、デジタルの悪い面を教えて気をつけるように促すだけでなく、主体性をもってデジタル社会に参画していく一市民を育てるために、「デジタル・シティズンシップ教育」という視点も持つ必要がありそうです。
具体的なデジタル・シティズンシップ教育の教材は、本書の著者の一人でもある豊福先生にFacebookで教えていただいたものがありますので、見ていただくと非常に分かりやすいと思います。
「オンラインのあんぜん」
https://youtu.be/A7UoOKlGYVg(字幕版)
※動画再生中の字幕表示をONにしてください。
豊福先生がYouTubeに上げておられる動画はほかにもありますので、ぜひ見てみてください。
「1年生:オンラインではひとやすみして考えよう」(歌)
https://youtu.be/f8RTr4G4Nu0(字幕版)
「2年生:わたしたちはデジタル市民」(歌)
https://youtu.be/F-SQ-ZOt1Wg(字幕版)
さて、本書の後半には、
「ああ。このあいだ僕がやった授業が、まさにそうだったなあ」
と思えることが書いてありました。
・教員主導型のICT活用では授業を牽引できない
・海外の事例では、教員がだいたい冒頭の数分でやるべきことをてきぱき指示したら、後は学習者中心のコンピュータを使ったペアワークやグループワークにたっぷり時間を割り当てるのが普通だ。
(p104より)
僕が思い起こした授業は、小学3年生で実施したプログラミングドリルの授業です。
▼無料で誰でもできるプログラミングドリル「アルゴロジック」
(2022/10/06の日記)
学習指導要領に則った学習内容を扱った授業ではなかったので、できたことかもしれません。
でも、子どもたちそれぞれがプログラミングドリルに取り組みながら、困ったら自分たちで相談して解決しようとしていたのは、なかなかいい感じでした。
先ほど引用したページの次のページには、「一斉授業とICT活用のマッチングの悪さ」(p105)といったことも、書かれていました。
従来の一斉授業の中でICT活用を図っていこうとしたとき、ICTを活用しきれないと感じるのは、そもそも自然なことなのかもしれません。
一斉授業によらない授業を、先生たちが学ぶときが来ているように思います。