税所篤快『未来の学校のつくりかた』
昨日のブログで少しだけふれていた以下の本を紹介します。
『未来の学校のつくりかた 5つの教育現場を訪ねて、僕が考えたこと』
(税所篤快、教育開発研究所、2020、1800円)
著者の税所篤快(さいしょ・あつよし)さんは、教育後進国にICTを使って教育を届けてきた方。
この方の経歴も、かなり面白いです。
このブログでは、過去に『突破力と無力』を取り上げています。
これまでは海外の教育後進国に教育を届ける活動をされてきた税所さんですが、
『未来の学校のつくりかた』では、国内の先進的な取組を取材されています。
取材されている「教育現場」は、それぞれ本当に素晴らしい取組をされていて、刺激を受けます。
具体的には、次の5つの場所を取材されています。
・大阪市立 大空小学校 (映画『みんなの学校』の舞台として有名)
・N高
・杉並区
・侍学園
・大槌町
以下、僕の個人的な読書メモです。
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『未来の学校のつくりかた』
<大空小学校>
・1年~6年までの全クラスの数字を記したテニスボールを箱に入れ、それを校長も含む教員が1つずつ引き、書かれていたクラスで1時間の授業をする
(p29より)
大空小についてはすでに映画を何度も観たり、木村泰子先生の著書を何冊も読んだりして影響を受けてきました。なので、すでに知っていたことも多くあったのですが、この取り組みは初めて知りました。
すべての先生が、どの子にも、かかわる。
それにランダムなゲーム的要素を持たせて、非常に面白い取組になっていると思います。
実は僕も以前同じような取組を、過去の勤務校でしたことがあります。
そのときは、本の読み聞かせでした。
これも、部分的な担任解体制と言えるかもしれません。
担任だけが自分のクラスを見る、というのは、弊害も多くあります。
「みんなの学校」である大空小学校では、「みんなでみんなを見る」ということが徹底されている気がしました。
<侍学園>
・役を演じることがそのままがそのまま
「自らの過去の葛藤や絶望をさらけ出し、
いま抱えている想いを精いっぱい叫ぶ」
ことにつながる
(p136より)
サムガクの学園祭で行われる舞台発表についての記述です。
劇団員だった平形有子教頭による、本気の演技指導。
「学ぶことはまねることから」というのはよく言われますが、
演劇というのは、まさにまねることにほかなりません。
僕自身も演劇で自分を出せるようになり、成長させてもらったと思っています。
僕の場合は大学4年生になって誘われてから、はじめて演劇に関わりはじめました。
それ以来、演劇とは人間教育に他ならないと思っています。
サムガクが演劇を教育に取り入れているのは、非常に素晴らしい着眼点だと思わずにいられません。
・「とにかく話しかける。自分を偽らないで行動する。
俺ってこういう人間だよと、できるだけ自己開示する。
そして、何かを伝えるときは、常に真摯に」
(p145より)
サムガクの新米教師である、齋藤匡彦さんの言葉です。
信条は、「嫌われる勇気」を持つことだそうです。
こういう先生がたくさん集まっている侍学園は、子ども達の信頼も厚いだろうな、と思います。
<大槌町>
・「明日がないと思って生きる。それを震災の時に学んだ。(略)
希望は自分でつくるものだった」
(p199より)
東日本大震災の被災地である大槌町。
その被害はすさまじく、まさに、ゼロからの復興だったようです。
ゼロから新しくつくるときに、希望なんてない。
おそらく不安でいっぱいで押しつぶされそうな毎日だったと思います。
しかし、「希望は自分でつくる」と覚悟を決めることで、前に進み続けることができた。
どんな状況下でも希望を持つことはできると分かり、勇気が持てます。
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最後に、「おわりに」のところから、税所さんの気づきが集約された言葉を引用します。
「賞賛は最大の罠。初心に帰れよ、ばかものよ」
「あの頃の世界への好奇心と、軽やかな足取りを思い出せ」
(p226より)
バングラデシュで成果を挙げた税所さんがもう一度初心に帰ることを思い出したように、
僕ももう一度初心に帰って、がんばりたいと思います。
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