「インクルーシブ教育」を考えるテキスト『「みんなの学校」をつくるために』

「​インクルーシブ教育」に関する本が多く出版されるようになりました。
一昔前にも「インクルーシブ教育」(障害のある子も通常学級で共に学ぶ教育)に関する実践はありましたが、全国規模ではなく、ある特定の地域で取り組んでいて、なかなか周囲に広がらない、という状況であったかと思います。
それが、全国的な広がりが見え始めた、と言っていいかもしれません。
現段階での「インクルーシブ教育」について考えるワークショップがそのまま本になったものがあります。
読んで非常に衝撃を受けました。
「インクルーシブ教育」について考える際には、ぜひ読まれてみては、と思います。

​『「みんなの学校」をつくるために ~特別支援教育を問い直す~』​
( 木村 泰子×小国喜弘、小学館、2019、1500円)
(リンク先で「立ち読み」ボタンを押すと、試し読みできます。)

▼​出版社公式サイト
このブログでも一時期とりあげさせていただいた映画「みんなの学校」
2017/6/8「みんなの学校」上映会&木村泰子先生講演会 in兵庫県西脇市
インクルーシブな学校の代名詞のように使われ始めていますが、やはり、公立の小学校で取り組まれていることがそのまま映画になったというのが、大きいと思います。
この映画をきっかけに、公立小学校のインクルーシブ教育を考える、というのは、たとえ映画の内容に批判的な考えを持っていたとしても、有効な研修方法ではないでしょうか。
この本はワークショップを編集して収録したものですが、その場に登壇される先生方が、すごいです。
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​木村泰子、小国喜弘、星加良司、川上康則、川村敏明、前川喜平ら錚々たる講師陣の講義を受け、参加した全国各地の現役教員(大空小の現役教員を含む)らが白熱した議論を展開。​​

(出版社公式サイトより)
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考えと考えがぶつかりあい、対話から深化を図る。
非常に質の高いワークショップだと感じました。
上の商品写真では本のオビが表示されていません。
オビにはこう書かれていました。
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​全ての子どもが安心して学べる「空気」をどうつくるのか――?​
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本来の欧米型の「​インクルーシブ教育」は必ずしも「障害のある子も通常学級で共に学ぶ教育」だけを指すのではなく、もっと広範囲にいろいろな子どもを包摂する教育を意味します。
本書では、そういった一歩進んだ「​インクルーシブ教育」に向けての議論がなされます。
東京大学教育学部「特別支援教育総論」のテキストになっているようです。
キーワードはいろいろ示されますが、「障害の社会モデル」「学習権保障」の話は、おさえておかないといけないところだと思います。
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・「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である。
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(内閣府​「ユニバーサルデザイン2020行動計画​」より)
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・授業のやり方やルール、そういったものをしんどい子に合わせて変えていく努力をすること自体が、インクルージョンの中身なのだということが(障害者権利条約の中で)改めて強調されている
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(p69 小国喜弘さんの講座より)
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・子どもにとって必要でないルールは極力なくしていくという発想が必要
・多くの学校で行われている学習規律や学習スタンダードのようなものは問題である

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(p80 小国喜弘さんの講座より)
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「〇〇スタンダード」には、利点もありますが、問題もあります。
市内や学校内で統一してやっていくのは、大切なことではありますが、その中で不適応を起こす子どものことも、考えたうえで、子どもを中心に再考していくことこそ、大事にしていきたいと思います。
学校現場での非常に具体的な場面に関する再考としては、次のような場面も本書の中で取り上げられています。
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・「わかる人?」と挙手を促す場面。
 あれはもしかしたら、わからない子の居場所を失わせている発言かもしれない

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(p111 川上康則さんの講座より)
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こういった、現行の教室で当たり前にみられる光景を再考する、というのが、本当に大事だと思います。
川村先生が本書の最後のほうの対話で、
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・私自身は凄い先生でなくていいんです。
 私の役目は何よりも、楽しそうにやっていることです。

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(p151より)
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と言われていました。
僕は、非常に共感します。
木村先生も、こう言われていました。
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・空気は自分がつくるものですね。
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(p162より)
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明日の教室を作るための参考となる考え方と、勇気をもらえる本です。

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