「学校統廃合」「複式学級」「小規模教育の良さ」についての学習会
さて、今日は6月に地元であった、地域の学習会のことを書きます。
ずっと書きたかったのですが、寝かせすぎて、2ヶ月以上経ちました。
#寝かせすぎ。
6月18日にあった、地域の人向けの学習会。
テーマは、「学校統廃合」「複式学級」「小規模教育の良さ」でした。
僕は、通級の巡回指導で複式学級のある小規模校も回っていました。
小規模校の良さは、肌で感じるところがあります。
複式学級の良さも、同様です。
最近は「学校統廃合」の話ばかりで、「ちっちゃい学校は、あかん」と言われているみたいで、ちょっといやな気持ちでした。
そこで、この学習会に参加して、「統合推進」以外の話を、しっかり聞こうと思ったのでした。
講師は、京都橘大学教授の、藤岡秀樹さん。
いろいろなところで講演をされているようです。
藤岡さんのお話は、いろいろな小規模校の具体的事例が豊富でした。
具体的な話を聞けば聞くほど、僕が実際に見てきた学校現場と共通するものがあり、うなずけるものがありました。
たとえば、「規模が大きいほど、学級崩壊が起きやすい」という話。
大規模校で、たとえば6年1組で学級崩壊が起こると、他のクラスにも伝染していく、という、生々しい話もありました。
これは、確率の比較の問題で、あくまでも傾向としてそういうことがあると言えるだけですが、その傾向は、たしかに僕も、あると感じます。
日本の学校は学級担任1人で見なきゃいけないクラスの人数が、諸外国に比べて多いです。
なので、そもそも、クラスの人数がいっぱいいると、細かく丁寧に見きれないということがあります。
一人ひとりに真摯に向き合い、子ども一人ひとりのことを考えた教育をしようとすると、「少人数教育」のほうに、どうしても軍配が上がります。
国も、それを認めて、40人学級から35人学級に定員を減らす、ということを言い出しましたが、35人というのは、それでも、諸外国に比べて、多いです。
僕の実感としては、「16人」が一番理想的だなあ、と感じています。
1クラス16人の教室をいろいろ見てきましたが、何をするにしても、ちょうどいいクラスサイズだと感じました。
まあ、いろいろあって、いいんですけど。
あくまでも、僕の個人的な、印象です。
藤岡先生は、「教室を2人の先生で教えるティームティーチングをすることで、学級崩壊については、改善する」と言われていました。
日本の教育は長らく「担任1人」に任せきりになっていましたが、「2人体制」によって多くの問題が解決すると思われます。
小規模校のよさとして、これも確率の比較の問題ではありますが、
「不登校が少ない」ということも挙げられました。
大規模集団だと息苦しいという子もいるので、小規模校でのびのび過ごすのは、感覚的には、ぼくは個人的に大賛成です。
僕自身、大規模集団が苦手なので・・・。
教室の中にめいっぱいに40人の机とイスが並んでいるのは、あまりにも余裕がない、と感じます。
藤岡さんは、小規模校のほうが、「児童生徒の自治能力が高まる」ということも、言われていました。
事例として、ある小規模の高校の生徒が、卒業式の答辞で言った言葉が、紹介されました。
「少人数だからこそ、生徒が主体的になれた」というものでした。
僕も実際に大規模校と小規模校の両方を巡回していた経験から、
「比べてみると、たしかにその傾向がある」と感じています。
僕が巡回で見てきたのは小学校だったので、小学校の話をします。
たとえば、6年生が4人とかだと、その4人は学校のリーダーシップをとらなければ、しゃあないわけです。
集団の影に隠れてこそこそおとなしく過ごすということは、できそうにありません。
それがいい場合もあれば、逆に働くこともありそうですが。
リーダーシップをとるというと大げさですが、ずっと一緒に過ごしてきた子ども集団の中で、ちっちゃい子のことも考えて行動する、というだけのことです。
知らない子たちの前で話をするのを強制されるといった種類のことではありません。
学校全体がひとつの家族のようで、気心が知れている、というのは、かなり大きいです。
子どもたちの結びつきが強いので、教師がいなくても、子どもたちでいろいろ考えてやっていく、ということが、かなりできやすいように感じます。
「主体性」というのは、ほんとうに大事で、社会に出て生きて働く力の中心は、その一言に尽きるのではないか、と僕は思っています。
「人とのかかわりの中で主体性を発揮する」ということさえ学べれば、学校はその意義を達成する、とさえ、思っています。
学習会では、藤岡さんのお話以外にも、地域住民の生の声がたくさん聞けたのが、うれしかったです。
地域住民からの質問や意見が相次ぎ、終了予定時刻になっても、終わりませんでした。
学校統廃合についての行政の説明会でも、同様の傾向があるようです。
やはり、学校は地域のものですから、地域の声を聞かなければなりません。
「小規模教育の良さ」がテーマではありましたが、地域で実際に小規模校で育ってこられた方の、生の話を聞くと、「良いことばかりでもない」というのも、また、明らかでした。
「小中9年間同じメンバーだった。
いじめはないように見えても、あった。
部活は、卓球とバスケのみ」
というお話は、なかなか衝撃的でした。
実際にその中で育ってこられた方の話は、重みがあります。
もちろん、「小規模校で育ってきて、よかった」というものも、ありましたよ。
そんな中、会場からは、
「いろいろな学校があっていい」
という意見も出されるように、なりました。
そのとおりです。
僕も、一律に学校統廃合に反対しているわけではありません。
「大規模校も、小規模校も、ある」というのが今の現状ですが、これがいい、と思っています。
だから、「統合、統合、また統合」というような風潮には、強い違和感を覚えています。
僕は小学校教諭なので中学校のことはよく分かりませんが、
統合を求める理由は中学校のほうが深刻のようです。
「統合しないと、教科を教える先生がいない」という理由が大きいようです。
中学校は教科担任制なので、大きな学校にして先生の数を多く確保しないと、教科によっては教えられない先生が出てくるらしいのです。
ただ、これについては「子どもの話」とは別の、大人の都合の話なので、僕は「それが主たる理由となって、統合するというのは、おかしいんじゃないかな」と思っています。
藤岡さんは京都の大学の先生ですが、今、京都でも学校統廃合が進んでいて、日本の小学校の先駆けである「番組小学校」も、統廃合の流れの中で消えていこうとしているそうです。
学校統廃合の問題は、地域の歴史を、今後どのようにつないでいきたいかを考えることでもあります。
一面的な理解によらず、多面的なものの見方で、当事者主体の議論をしていくべきだと思います。
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