中村健一『策略 ブラック学級づくり 子どもの心を奪う!クラス担任術』その1
勤務校では長期休業中、オススメの本を持ち寄って貸し合っています。
「現場の先生」のニーズを一番分かっているのは、「現場の先生」。
「これは他の先生方の役に立つだろう」と思って持ってこられる本は、本当に役に立つ本が多いです。
僕がお借りしたのは、中村健一先生著の、次の本です。
『策略ーブラック学級づくり 子どもの心を奪う!クラス担任術』
(中村健一、明治図書出版、2015、1870円)
非常に中身が具体的で、理想よりも「現実」に即応した本でした。
僕も一応小学校教員を20年やっていますので、「現実」は理想通りに行かないということも、よく分かっています。
とにかく学級崩壊を起こさせないように、策略を持って学級経営にあたることを説くこの本は、「現場で役立つ」最たる本だと思います。
歯に衣着せない、ホンネの名言が、多数。
僕が思い描く「理想」の教育とは真逆のことを説かれていることも多いですが、
現場の大変さ・苦労を思うと、それもまた必要だと思わざるを得ません。
絵に描いた餅を負うよりも、現実における安心・安定が、まずは必要です。
学級経営に苦労されている先生は、ぜひ読まれることをオススメします。
中村健一『策略 ブラック学級づくり 子どもの心を奪う!クラス担任術』
その1
(今回は第1章「集団統率術」まで。)
・熱意だけで クラスはまわせない!
・そのクラスでは4月、いかにも楽しげにミニゲームが数多く行われる。
なぜか?
―子どもたちにゲームを通じて
ルールと教師に従うことを教えるためだ!
(カバー裏より)
のっけから、ゲームの思わぬ効用が書かれています。
これ、すごく重要な指摘だと思うんです。
ゲームというのは、野球でもサッカーでも、ルールを守らないと楽しくありません。
ゲームを通じて、ルールを教える。
これは、教える方にとっても、教わる方にとっても、楽しいやり方です。
スポーツ好きな担任の先生なら、スポーツを通じて学級を作るのもいいですね。
僕が「学習」と「ゲーム」の掛け合わせにこだわるのも、
こういったWin-Winの関係が背後に隠れているからです。
・私は常に「策略」を巡らせて教育を行っている。
「感情」の入る余地はない。
(p3より)
・思いつきのその場しのぎの教育が通用する訳がない。
(p19より)
1人で進める仕事なら自分のペースでできますが、人間相手の仕事ですので、感情的になってしまいそうなときが、多々あります。ただ、感情的になってプラスになることより、マイナスになることの方が多いです。冷静に策略として感情的になるならまだしも・・・。
昨日のブログで将棋ゲームの新企画の具現化を考えていることを書きましたが、将棋をするようなアタマで仕事に向かうのは、非常に重要な考え方です。
将棋では感情的になったら、負けます。
何も考えずに突っ込んでいっても、負けます。
先を読むことが、重要です。
教育もまた同じ。
「教育で大切なことはみんな将棋から学んだ」という本でも書こうかと思うぐらいです。
中村健一先生のこの本は、表紙にでっかく「策略」というハンコがポンと押してあるデザインなのが、すごくいいです。
策略を持って当たるのは、「負けない」ために、特に重要です。
・「上條理論」を使えば、教師自身が面白いことをする必要はない。
私のような真面目な普通の教師でも教室に笑いが起こせる。
(p47より)
上條先生の本は一時期、愛読していました。
上條先生の「フリ」→「オチ」→「フォロー」の理論は、かなり面白い理論です。
子どもを主役にし、教師は脇役に徹するという教育哲学とも相性がいいです。
ファシリテーションの考え方とも、近いと思います。
・厳しさを先にする。この順番を間違ってはいけない。
(p51より)
僕はよく順番を間違えるので、気をつけたいと思います。
・発達障害をもつ子は絶対に怒鳴らない。
発達障害をもつ子が問題行動を起こしても上手に「流す」。
周りの子も、そして、本人も 何となくできているようなイメージしにしてしまうのだ。
(p55より)
・女子もみんなの前で怒鳴ってはダメだ。
女子はレディとして接する。
その子の好きな男子が教室にいるかも知れない。
恥をかかせたら、その子は教師に背を向けるに決まっている。
・いわゆる「やんちゃ君」も、相手にしない方がいい。
彼らは、怒鳴るとスネて、反抗的になる恐れがある。
・叱るべきは、「やんちゃ君」の周りの子たちである。
「やんちゃ君・予備軍」と呼んでもいい。
(p56より)
厳しくすると言っても、発達障害をもつ子も、女子も、やんちゃ君も、怒鳴らない、ということを書かれています。僕は、これは非常に実践的な内容だ、と感動しました。
策略をもって叱るという哲学ともつながってきます。
教室の将来像を見据えて、その将来像に近づけるために、叱る。
そうすると、「Aということをした子は平等に同じように叱る」ということにはならないのです。
それでいいのです。
・褒めるために叱る
ということを意識すると、指導が非常に楽しくなる。
また、叱ることにも余裕が出る。
(p63より)
教室の将来像を見据えるということと共通する部分です。
マイナス転じてプラスとなす。
そのために叱るのです。
逆を言えば、プラスになる見通しがないのに叱っても、マイナスの上塗りをするだけで、理想的な将来像からどんどん遠のいてしまいます。
叱るときは、「この次はこの子を褒められる」とニヤニヤしながら叱るといいですね。
第2章以降の僕が大事だと思ったところは、また次回のブログでご紹介します。
ちなみに第2章のタイトルは、「個別対応術」。
神算鬼謀てんこもりです。