長岡秀貴『ダッセン』
少し前に、長岡秀貴先生のYouTube動画を見ました。
ネット上で「これは観たほうがいい」「必見!」という意見をたくさん目にしたからです。
それが、伝説の動画、「時間という財産」でした。
のっけから、引き込まれました。
シビレました。
そこで、ご著書のうち、1作目の『ダッセン』を購入。
『ダッセン 新装版』
(長岡秀貴、サンクチュアリ出版、2006、1200円)
「ダッセン」は、「脱・先生」の略。
「脱線」も、かけてあるかもしれません。
その名の通り、「先生」の枠を遥かに超えた「先生」像がそこにありました。
予想の遥か斜め上を行く本でした。
圧倒されました。
本書に関しては、まるごと読んでいただいて、感じてもらうのが一番です。
部分的に取り出して、それについてどうこう言ったところで、この本の持つ空気・熱気は伝わりません。
ただ、自分用の備忘録として、自分が覚えておきたいところだけを少し切り取って、残しておきたいと思います。
くれぐれも、未読の方は本書をまるごと読んでいいただけますよう、お願いします。(^^)
とにかく、影響力のある本です!!
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『ダッセン 新装版』
(自分用)
・(有也先生は、)子どもの話に、しっかり耳をかたむけ、うなずきながら共感してくれる大人だった。妙に自分が大人扱いされている気分になり、早くこの先生と学校生活を共にしたいと思った。
(p66より)
高校時代、左半身麻痺になった著者を病院まで面会に来られた「有也先生」。
長岡さんに最も影響を与えた先生が、この方だったと思います。
・俺は荒れている奴らから、積極的に話し掛け、今の不満を聞いた上で、俺の理想を熱く語った。(略)真剣に訴えた。
(p78-79より)
奇跡的に回復し、学校に復帰した長岡さんは、有也先生が自分にしてくれたように、周囲に対して真摯にかかわっていき、荒れていた現状を変えていきます。
クラスのイベントとして仕掛ける内容には、かなりハチャメチャなものもありました。
ただ、だからこそ、クラスの結束を固くしていったことが、伝わってきました。
・俺の世代にも、そして子ども達の中にも気軽に「死ね」や「殺すぞ」と口にする奴らがいる。俺もそれまで、簡単にその言葉を使ってたのかもしれない。自分が死の淵を経験したにもかかわらず、そんな排他的な言葉をいとも簡単に人に投げかけているような駄目な人間だった。
俺はその言葉を聞くと、誰でもかまわず不快感を示し、「その言葉は撤回してくれ。本当に殺せるのか?本当に死んでほしいのか?」と異常なぐらい責め立てる。
(p177より)
ここは、僕が一番覚えておきたいと思ったところです。
自分自身も、口では「その言葉が一番嫌いです」などとかっこつけて全校集会の場などで言うくせに、荒れている子どもの姿を見て見ぬふりをしたり、真摯に向き合うことから逃げていたところがあります。
ここを読んだだけでも、この本を読んだ価値があると思いました。
・日々増え続ける学校に行けない、行かない子ども達の数。
130万人の子どもたちが行き場を失っている現実。
誰もやらないのであれば、気づいた俺がやる以外ない。
そう。俺はもう誰も殺したくなかったんだ。
誰にも死んで欲しくなかった。(略)
その気持ちだけが、俺の冒険への出発を後押ししてた。
(p222)
教師として母校の教壇に立ち、充実した生活を送っていたにもかかわらず、辞めて学校設立に動き出す著者。その思いと行動力に、胸を打たれました。
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とにかく最初から最後まで、マンガやドラマの中でもここまでのことは起こらないのではないか、という波乱万丈な人生ストーリー。
ただ、この人なら、不可能を可能にしていけると思えてならなくなりました。
勢いでダダダーッと書かれたところがある本なので、文章の校正が追い付いていないところがありますが、一気に著された本だからこそ、著者のあふれんばかりの思い・情熱・空気感が伝わってくる本です。
教師であれば、ぜひ、読んでいただきたい本です。
なお、長岡先生はその後「NPO法人 侍学園」を設立されています。
その学校のことを僕は、2年ほど前に『未来の学校のつくりかた』という本で知りました。
そのときも、侍学園=サムガクの精神に圧倒された記憶があります。
『未来の学校のつくりかた 5つの教育現場を訪ねて、僕が考えたこと』
(税所篤快、教育開発研究所、2020、1800円)
サムガクについては長岡先生の次の著書で詳しく書かれているようです。
未読ですので、こちらも今から読んでみます。
(今なら、文庫化もされているようです。)
『サムライフ』