業務を「外注する」という発想 ~山本智也『業務外注化の教科書』
先週の日曜日は、25年ぶりに前の会社でお世話になっていた方にお会いしました。
とてもなつかしかったです。
最近はあまり聞きませんが、一時期よく言われていたのは、「学校の先生は、世間を知らない」ということです。
学校を卒業して、そのまま学校の先生になったら、学校しか知らないわけです。
ただ、学校で教えている子どもたちは、当然ながら、いろいろな職業に就きます。
そして、いろいろな人生を歩んでいくのです。
民間会社での勤務経験は、どちらかと言えば、あったほうがいい気はします。
それは、子どもたちの将来像をより具体的に思い描くことにつながるからです。
よく「大人になったときに困らないように」とか「将来仕事をするときに役立つように」といったことを言いますが、それが漠然としたものでしかないか、具体的なものであるのかは、かなり大きい気がします。
自分自身がいろいろな仕事の経験がある、というのでなくても、いろいろな職業の方とつながっている、ということでも、見えてくることはずいぶんあるかと思います。
他職種の方とつながってたくさん話を聞けていれば、世の中にはどういう仕事があって、ふだんどんなことがあるのかは、ある程度分かるのではないかと思います。
手段はどうあれ、「現実社会で働くということ」をどれだけリアルに知っているかは、かなり重要です。
「将来につながる具体的な指導や支援」をしようと思ったら、なおさらです。
前置きが長くなりました。
ここからは、「現実社会で働くということ」を僕なりにリアルに考えてみた結果について、お知らせします。
僕が実際に民間会社で働いていたときに驚いたことなのですが、会社で働いている人は、いわゆる「社員さん」だけではないのです。
アルバイトとかパートとかは、もちろん知っていたのですが、それとは違う。
いわゆる「外注」と言われる方々が、けっこういます。
仕事を、外部の人に、発注するのです。
ときには、自分たちのほうが、外部の仕事を請け負って、仕事をすることもあります。
外注は、依頼するだけでなく、依頼されることもあるのです。
実際に経営を行う場合、このことは知っておかないと損をすると思います。
「社員さん」にできることだけだと、限りがあるからです。
僕は今は学校現場で働いていますが、学校教職員の働き方改革を考えるうえでも、実はこの「外注」というやつは、有効な考え方ではないかと思っています。
そこで読んでみたのが、この本です。
『副業で年収1億円!業務外注化の教科書』
(山本智也、ビーパブリッシング、2022、税別1500円)
この本には、インターネットを使って外注をかける具体的なビジョンや方法が書いてあります。
これにより、かなりの業務効率化が図れるととともに、大幅なコストダウンも見込めます。
#もちろん教職員向けの本ではありません。
#1人でビジネスをしようとしている人向けの本です。
外注の効果は、仕事を請け負ってもらえることによる直接的なメリットだけではありません。
業務を細分化して把握しなければ、他人に依頼できません。
「自分の仕事」や「自分たちの仕事」を客観的に細分化して捉えることは、たとえ人に任せないにしても、業務の再検討につながり、「いらん仕事」の削減にもつながります。
自分たちの「業務」を冷静に客観的に捉えなおすためにも、こういった経営者の視点での具体的な手法を扱った本を読んでおくと、視野が広がって、いいのではないかと思います。
実際に外注をおこなう場合、本書ではマニュアルを作って渡すことや、最初にちょっとやってもらって、仕事ぶりを確認してから正式に依頼することが薦められています。
誰がやってもできるようにマニュアル化することは、AIに頼む時にも重要になってきますよね。
生成AIが一般化してきたのは本書が出版された後ですので、現在では外注ではなくAIに注文したらやってくれる仕事もけっこうありそうです。
どちらにしても、依頼をする側が、分かりやすく紛れのない説明の仕方ができることは必要です。
「外注できる力」は、これからの仕事に、なくてはならない力と言えるかもしれません。
僕自身は、趣味の分野で、何回か「外注」をおこなっています。
作曲が趣味なので、作詞を依頼したり、楽器の生音を入れてもらったりするのです。
自分ができないことや、不得意なことを、ネットを通じて、得意な人や、できる人に、代わりにやってもらえるのです。
ひとりでなんでもできなくて、いい。
ひとりでなんでもやらなくて、いい。
個性や特性のある人が互いにカバーしあって、補い合って、フォローしあって、仕事をする。
それが、仕事というものです。
そして、今は顔を合わせなくてもそれができてしまうという社会なのです。
本書で扱われている例だと、メリットとして大きく感じるのは、距離や時間の制約が外れることです。
社員さんの勤務時間外に働いてくれる人材が、インターネット上で見つかるのです。
ネットを通じて連絡や納品をしてもらえる仕事であれば、それを勤務時間外に外部委託すれば、勤務時間内にはその続きをすることができ、時間の無駄がありません。
距離の制約が外れるのも、大きいです。
たとえば、札幌に取材に行く必要があるとして、札幌までの交通費や移動時間をかけなくても、札幌の人にネットで依頼をかければ、いいのです。
札幌の写真は、札幌の人に撮ってきてもらえば、いいのです。
ここでは、お互いにWIN-WINな関係が成り立っています。
Aさんにとっては、時間や手間がかかる仕事が、
Bさんにとっては、時間も手間もかからないということがあるのです。
AI時代の現代社会です。
外注する以外に「AIに頼む」というのも、かなり現実的になってきました。
いろいろ知っておくと、打ち手の幅が広がって、いいのではないか、と思います。
こういうことを扱う授業があっても、いいと思うんだけどな。
いわゆる、「経営学」の授業ですね。
「経営」の勉強は、日本では小中学校においてほとんどおこなわれていませんが、外国ではわりとおこなわれていると聞いています。
経営者の視点に立って、「経営」の基礎的なことを勉強してから働いたほうがいいかもしれませんよ。