フィンランドのインクルーシブ教育 ~矢田明恵「フィンランドにおける学習困難への対応」

これまで、イタリアカナダインクルーシブ教育について、本やオンライン学習会で勉強する機会を多く持ってきました。
(たとえば→「大切なことは、なにか」 ~『イタリアのフルインクルーシブ教育』などから
インクルーシブ教育は世界の潮流」と言われますが、ほかの国ではどうなのでしょうか?
LD学会の機関誌『​LD研究​』​第32巻第1号​(2023/2)に、フィンランドのことが載っていました。
よい機会なので、そちらに書かれていたことを、備忘録として書いておきたいと思います。

フィンランドと言えば、白夜とオーロラです。
オーロラのように、いろんな色が混ざり合うインクルーシブな教育を、フィンランドもやっているのでしょうか?
『LD研究』誌に寄稿された記事の正式なタイトルは「フィンランドにおける学習困難への対応」です。
寄稿者は、矢田明恵さん。
インクルーシブ教育に関する研究者の方で、フィンランドにずっと滞在されているようです。
なお、このブログでは僕の主観で覚えておきたいことをメモしているだけに過ぎません。
詳細については該当誌を直接ご参照いただき、原文を読まれることをオススメします。
(わずか5ページの報告ですので、すぐに読めると思います。
 学会誌は大学図書館には基本的にあると思います。)
こちらの寄稿の「Ⅱ」が「フィンランドにおけるインクルーシブ教育」になっていました。


・1998年には(中略)原則として、重度の障害がある子どもも地域の通常学級に必要な支援を受けながら在籍することが可能となった。
(『LD研究』第32巻第1号 p45より)


ということが書かれており、イタリアやカナダと同じような教育改革があったことがうかがえました。
なお、「障害」を社会モデルで見ているために、支援を受けるための「診断書は原則として必要ない」そうです。(p45より)
学級定数や、通常学級の教室に入る大人の数は、どうでしょうか?
これも、同じページから引用しますと、


・子どもたちの多様なニーズに対応するため、学校規模に応じて1人~複数人、クラス担任を持たない特別支援教員が通常学校に配置される
(『LD研究』第32巻第1号 p45より)


ということでした。
これも、イタリアやカナダの教育と似ています。
寄稿の「Ⅲ」は「学校視察から ――ヴァルテリ・オネルヴァ校――」となっており、実際の学校への訪問調査による報告が書かれていました。
それによると、フィンランドでのインクルーシブ教育への移行はまだ進行途中であり、「この5年間でヴァルテリ学校にて分離教育を受ける子どもの数は200人減少している」とのことでした。
ただ、まだ「分離教育を受ける子どもの数」は0にはなっておらず、それは「地域学校の環境がその子に合うよう整っていない」ことが理由なので、環境を整えて分離教育0をめざしていくという方向性のようです。(「」内の引用はp47から)
日本は島国で外国の情報が入ってきにくいところがありますが、今は求めれば情報が得られる時代ですので、外国の情報もどんどん参考にして、日本の教育を総合的に見直していきたいと思います。ぽっ
先ほど「フィンランドのインクルーシブ教育」で検索したところ、次のような情報も見つけました。
こちらも参考になるかと思います。
▼​フィンランドでインクルーシブ教育を実践している小学校の先生にインタビュー!障がいの有無に関わらず、全ての子どもに特別支援の視点を。
 (「先生の学校」2021/11/8記事)
▼​北欧諸国に学ぶインクルーシブ教育の本質
 (大内進、日本文教出版Webマガジン「学び!と共生社会」vol.24、2022/1/25記事)
下のリンク先の大内先生の記事に、
フィンランドは、日本でいう特別支援学校は残しつつも、できるだけ多くの子どもが地域の学校で学ぶことができる仕組みを整えてきました。つまり、特別支援学校はあるもののニーズがあるからといって安易にそこへの就学を進めるのではなく、基礎学校(小・中学校)での支援を強化することに力を注いでいるのです。」と書かれていました。
日本の方向性も、これと同じものかな、と思いました。ウィンク

「個別の指導計画」はどうあるべきか?~イタリアやカナダのインクルーシブ教育をふまえて~
 (2023/08/14の日記)
「カナダの学校に学ぶインクルーシブ教育」(8/11オンライン学習会の案内を含む)
 (2023/08/07の日記)
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【紹介】「日本型インクルーシブ教育への挑戦 ― 大阪の「原学級保障」と特別支援教育の間で生じる葛藤とその超克 ―」(ネットで無料で読める論文)
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