自分を生かす。そして、すべてを生かす。 ~鈴木隆祐『東海高校・中学校 カヅラカタ歌劇団の奇跡』
宝塚歌劇を観に行った帰りに宝塚駅近くの書店で買って帰った本を、読み終わりました。
(宝塚歌劇観劇の日の日記は、こちら。)
『東海高校・中学校 カヅラカタ歌劇団の奇跡』
(鈴木 隆祐(りゅうすけ)、駒草出版、2022/7、税別1600円)
かなり刺激的な本でした!
なにしろ、宝塚歌劇の、まんま、男の子版!
すべての役を、男子中学生や男子高校生が演じているのです。
しかも、それが本家の宝塚歌劇を彷彿とさせる再現度らしいのです。
「これは、おもしろい!」と思って、数ページ立ち読みして、迷わず買って帰りました。
そして、その甲斐あって、やっぱりすごく、面白かったです。
劇の解説などは、劇自体を知らないとよく分からないところはありましたが、こういった「部活」が成立していて、その中で生徒さんが成長していることが、本書を通して、かなり伝わってきました。
それを成り立たせているこの学校自体も、素晴らしいと思いました。
↓カヅラカタ歌劇団の本気の舞台は、こんなのです!!!
(※注:ブログ内再生は禁止されています。リンクを開いてご覧ください。)
本を読んでいたのではんぱないステージを作っているのは知っていましたが、まさに圧巻。
東海高校・中学校の生徒さんだけでなく、保護者や地域の他の学校の方の協力もあって、非常に質の高いステージを実現できているそうです。生徒さんがイキイキと演じられるのも、そういった周りの応援があってこそなのでしょうね。
印象的な記述がいくつかあったので、本書の読書メモ、残しておきたいと思います。
鈴木隆祐『東海高校・中学校 カヅラカタ歌劇団の奇跡』
(・太字部分は、本の引用。
顔マークのあとの緑文字は僕の個人的コメントです。)
・(山本五十六の)「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」が、東海の教育方針と重なる
・まずは自分を生かす。
そして、自身につながるすべてを生かす生き方をする。
(p67)
山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」は知っていましたが、その続きがあるとは、知りませんでした。
続きがまた、名言ですね。
なぜこちらはあまり広まっていないんだろう。
僕が知らなかっただけかな?
カヅラカタの生徒さんがカッコイイのは、こういったカッコイイ教育方針があるからこそなのでしょうね。
カヅラカタ歌劇団の方針もカッコイイですが、学校全体の教育方針や学校全体の雰囲気も、またカッコイイです。↓↓
・「同調圧力がいい意味で全くない。」
・「各々が個性を当然として受け入れている。」
・仏の教えが底辺に流れるからこそ、とても寛容な学び舎なのだ。
(p238より。「」内は、卒業生の言葉。)
私立の仏教系の学校なので、そこのところがベースにあるようです。
仏教には、僕もたしかに寛容な精神を感じています。
公教育では特定の宗教に肩入れするようなことは御法度ですが、こういった雰囲気はぜひ真似したいと思いました。
最後に、カヅラカタ歌劇団の顧問を長らくされていた久田教諭の言葉を引用させていただきます。↓↓
・中高生時代に育むべきは、”良質な自己肯定感”だ
(p242)
・社会的に作られる自己否定感は社会的活動を通してしか回復し得ない
・社会的な活動を通じて、他者と共同してなにかを作りあげることが自己肯定感を育む
・それによって他者と共生する良質な自己肯定感は育まれる
(p243)
久田教諭が、ご自身の体験から体得された原理。
演劇活動と大舞台を作りあげるために周囲と協力しながら本気で活動することが、生徒たちの「良質な自己肯定感」を育んでいることは間違いないと思います。
宝塚っぽいユニークな歌劇団の本を買って読んだと思ったら、教育書として思いがけず刺激を受ける1冊ともなりました。
東海高校や中学校は「共生」と書いて「ともいき」が学校のポリシーで、子どもたちはいろんな活動を通して自己実現をはかっているそうです。
本で読んだだけですが、個性を伸ばす素晴らしい教育をされているように感じました。
読書メモに書いたことは、忘れずに覚えておきたいです。
そして、自分の教育実践にも、ぜひ生かしていきたいです!