逆から読み解く組織経営の本質『サボタージュ・マニュアル』

​​​​今年度の締めくくりをすると同時に、そろそろ次年度のことも考えていかなければなりません。
やはり3月は忙しいですね。
4月から新しいメンバーで組織を組み直すのは、学校だけでなく民間企業も、そうでしょうか。
​組織​というものを考えるうえで、なかなか面白い本があるので、紹介します。


『サボタージュ・マニュアル 諜報活動が照らす組織経営の本質』
(米国戦略諜報局(OSS)
、北大路書房、2015、税込1540円)
『サボタージュ・マニュアル』、
つまり、「サボリ」のマニュアルです。
いかにして組織をダメにするか、というマニュアルです。(笑)
「こういうコンセプト、非常に面白いなー」と思ったので、ネットで見つけて購入しました。
もともとは、戦争で敵国を弱体化するために、スパイが敵国内でとるべき行動をマニュアル化したものです。
一時期、ネット上でかなり話題になったそうです。
「こういうことをすると組織がダメになる」ということが書いてあるので、
逆説的に、「この逆をすれば、組織がよくなる」ということもわかる仕組みになっています。
驚くべきことに、けっこう日常的に「よかれ」と思って僕たちがやっていることが、「組織をダメにする例」として挙げられています。
たとえば、​会議​です。
僕たちは組織をよくするために会議をしているつもりですが、
この本では、組織をダメにする例として挙げられています。
(詳細はこの記事の最後に述べます。)
​リーダーシップ​​についても、少しですが、書かれています。


​・「心理的安全」をスタッフに行き渡らせるためには、リーダーシップが重要である​
​「君たちの意見が必要だ。私はきっと何かを見落としているだろうから」​
(p44)


こういうリーダーになら、ついていきたいと思いますね。ウィンク
リーダーが傲慢になることは組織にとって損失であり、メンバーのフォローがあって、初めて組織としての活動が成り立つわけです。
「君たちの意見は必要ない」とはっきり言わないとしても、言外にそれを匂わせている場合もあります。
そのようなリーダーシップのもとでは、組織として機能しなくなっていきます。
これは、「学校」という組織だけでなく、「学級」という組織にも成り立つと思います。
学級の組織と言えば、大多数の学級では、リーダーは「先生」でしょうか。
メンバーは、所属する子どもたちですよね。
「先生」が子どもたちの意見に対し、聞く耳を持っているかどうか。
それが、健全な学級としての分かれ目なのかもしれません。
ちなみに僕自身は担任を持っていませんが、教職員チームの中でリーダーとして動く場面はあります。
これを読んで、リーダーシップの観点から、ずいぶんサボっていたなあ、と反省しています。
もともと、ひとの意見を聞かずに、自分の考えだけでやろうとするところがあります。
組織のサボタージュを進めていたわけです。
反省すること、しきりです。号泣
組織をダメにする例として、​派閥​のことにもふれておきたいと思います。
人数が多くなってくると、派閥ができてくることが、往々にしてあります。
ドラマの「半沢直樹」でも、合併後の銀行で、元はどちらの銀行だったかで派閥ができていました。
この本では、派閥について、次のように書かれています。


・人間は興味深いことに、外に敵がいない場合には中に敵をつくって、ローカルな「内集団」と「外集団」をつくろうとします。
・ライバル会社との熾烈な争いがあるうちは「敵を外につくることができる」
(p50)


本書はアメリカの公的機関が科学的な根拠に基づいて明確になったことを書いてありますので、非常に興味深いところです。
人間にはそういった性質があるようです。
学校の先生には異動があるので、これを読んでいるあなたも、4月から派閥のある学校に異動することが、あるかもしれません。
「そういうものだ」と思っていると、ストレスにはなりにくいかもしれません。
おっと、これでは解決になっていない。(笑)
ここまでの引用は、越智啓太さんがアメリカの「サボタージュ・マニュアル」をふまえて日本の読者向けに書いた解説から、引用させていただきました。
本書には米国戦略諜報局の「サボタージュ・マニュアル」そのものも収録されています。
そろそろ、「サボタージュ・マニュアル」本文も引用し、その恐るべきマニュアルの一端を明らかにしていきたいと思います。大笑い


きれいな工場は火災を起こしにくいが、汚れたところでは容易である。
・汚れとゴミが十分に蓄積されたのであれば、防火性の高い建物も燃えやすくなるであろう。
(p84)


これを読んで、僕の机の周りはいつも汚いので、大変反省しました。
うおおっ、僕のサボタージュスピリットに机上が侵食されている!
仕事がパンクして燃え上がるのも、時間の問題でした。
ううむ、スパイめ。僕の机上を汚くして、燃えやすくするとは、いつの間に!
あわてて自宅の机上を、少しだけ整理整頓しました。
あぶない、あぶない。大笑い


・何事をするにも「決められた手順」を踏んでしなければならないと主張せよ。
 迅速な決断をするための簡略した手続きを認めるな。

・「さらなる調査と検討」のためにすべての事柄を委員会に委ねろ。
 委員会はできるだけ大人数とせよ。(けっして5人以下にしてはならない)

・通信、議事録、決議の細かい言い回しをめぐって議論せよ。
・「用心深く」するように主張せよ。「合理的」になれ。

(p113)


本書の中で最もびっくりするところが、上に引用したところです。
勤務校は大規模校なので、部会や委員会で代表教員が話し合って決めることが、多々あります。
そんな中、なかなか会議時間が減らず、簡略化や削減ができず、もうこの頃はあきらめモードで、「これ以上は減らせないよね」という感じになってきています。
勤務の適正化を図るうえで、「迅速な決断をするための簡略した手続き」は欠かせません。
ただし、これに対しては「正論」が邪魔をします。
それによるリスクを検討し、リスクに対する説明責任を検討し、合理的に、用心深く、丹念に準備して、ようやくそのようにすべきだ、という主張がなされます。
検討に検討を重ねるべきだ、という、一見もっともな主張です。
何より、リスクに備えなければなりません。
広くみんなで議論し、時間をかけて、納得できるものを、作り上げていかなければなりません。
細部まで詰めて、ようやく完成とするべきなのです。
このとき、それに要する時間的なコストは、あまり考えられていません。
教職員の給与というのは決して安くないのですが、現状は給特法の壁があり、どれだけ残業したとしても労働に見合ったコストというのは計上されないことになっています。
民間企業であれば、無駄な会議に参加する人員の時給を計算すると「この会議は〇円分の値打ちがなければならない」ということが計算できます。
しかし、教員の場合、40人の時間を1時間分とって会議をした場合の自給換算での会議のコストを計算すること自体、ほぼ無意味化しています。そういうコスト意識は大切だと思うんですけど。
そして、困ったことに、学校には「話し合ったほうがいいこと」が無数にあるのです!
この本の「組織と会議」のところは、学校の先生こそ読むべきじゃないか、と思いました。しょんぼり
長くなりましたが、熱が入ってきたので、もうちょっとだけマニュアルを引用します。


・あまり重要でない生産品に完璧さを求めよ。
・必要な手続きと認可を増やせ。
 1人でも十分なことに、3人が認可をしなければならないように取りはからえ。

(p115)


やっぱり、いろいろと身につまされることが多いです。
たとえば、「学習指導案」とか、内部だけで見合うものだから、文言の一字一句とか、訂正しなくてもいいと思うんですけどね。
なぜか、みんなで見合って訂正し合う文化が、職員室内には、醸成されています。
それ自体は悪いことではないのですが…。
僕は、声を大にして言いたい。
​完璧さを求めすぎていませんか!?​
たとえ外部に出る文書だとしても、誤字脱字レベルのことは、別にあったところで、大した問題ではないのです。
もっと大事にするべきことがあるのです。
何を大事にするかを考えましょう。
そして、大事なことに、時間を集中させましょう。
選択と集中です。
なんでもかんでも時間をかけていると、組織が、つぶれますよ!!
公的機関の場合、税金で運営されている分、市民への説明責任が生じるので、上記のようなことは、非常に多いかもしれません。
もちろん、税金の使い道は、間違ったことに使わないようにし、説明責任も果たしていかないといけないのですが…。
このあたりのジレンマは、まだまだ続きそうです。号泣
いかがだったでしょうか。
組織運営について考え直したい場合、ぜひ本書を読んで、自分たちの組織を振り返ってみては、と思います。
ちなみに、続編も出ています。ウィンク
こちらは、より一層「サボタージュ・マニュアル」を逆説的に利用しようという色合いの濃い本になっているようです。鴻上尚史さんとDaigoさんも、推薦されています。

『アンチ・サボタージュ・マニュアル 職場防衛篇 組織を破壊から守る9の戦術』
(R.M.ガルフォード
ら、北大路書房、2018、税込1980円)
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