「文字」という文化で失ったものがある(『ハルコロ』その1)
最近の記事では、アイヌのことを書いています。
なお、「アイヌ」には「ひと」という意味があるそうなので、「アイヌの人」という言い方はあえてしていません。
なんだか呼び捨てのように感じられるかもしれませんが、ご了承ください。
アイヌ文化に詳しい方の監修で描かれたマンガ『ハルコロ』の第2巻に、次のような記述があります。
・アイヌは文字を持たなかったとよく言われるが
人類が出現して百万年単位の中で見れば
文字を持った民族と持たなかった民族との差は
わずかな時間的なものである
・しかも 多くの民族は
文字を得たことによって
失ったものがかなりあった
・その中でも特に重要なひとつに
暗誦による民族文学――伝承の世界がある
(『ハルコロ』文庫版 第2巻 p77より)
僕はこれを読んで大変驚きました。
今、僕が勤めている「学校」というところでは、「文字」の読み書きに依存した学習が当たり前のようにおこなわれています。
そのなかで、「読み書き障害」と言われるお子さんが、とても苦しんでいます。
僕は、LD通級の担当者として、「文字の読み書きに依存しない授業」を模索し、通級児童の所属する学級に提案することをおこなっています。
「文字」は非常に重要なものであり、知的活動において欠くことのできないことのように思い込んでいましたが、実際は、そうではないのかもしれません。
アイヌは文字を持たなかった。
しかし、とても豊かな文化を持っていました。
もっと、「文字」以外に目を向けてもいいのではないか、と思いました。
上の引用箇所の最後に述べられている「暗誦による民族文学――伝承の世界」を現代に伝えるものとして、知里幸恵さんの『アイヌ神謡集』があります。
町の書店で購入できるほか、今ならオーディオブックで聴くこともできます。
知里幸恵さんオリジナルの序文は、アイヌの文化に誇りをもった知里幸恵さんの思いの詰まった名文です。
文字ではなく、朗読で聴くと、より一層、感慨深いものがあります。
『知里幸惠 アイヌ神謡集 』(岩波文庫 赤80-1)
[ 中川 裕 ]
「知里幸恵 『アイヌ神謡集』」(100分 de 名著)
[ 中川 裕 ]
「アイヌ神謡集 朗読CD」
<Audible>アイヌ神謡集
(ナレーター: 村上 めぐみ)
※試聴できます。
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