一緒に過ごすから分かる! ~星野ルネ『アフリカ少年が日本で育った結果 ファミリー編』
↓以前買った本のブログ記事は、こちら。
▼日本育ちのアフリカ少年のコミックエッセイ! 星野ルネ『アフリカ少年が日本で育った結果』
上のリンク先記事を読んでいただければ分かるように、
アフリカ少年が日本で育ち、暮らしてきた実話が、
読みやすいマンガになっています。
↓そして、こちらが、その続編です!
『まんが アフリカ少年が日本で育った結果 ファミリー編』
(星野ルネ、毎日新聞出版、2019、1100円)
この本の中に、「インクルーシブ教育」にとっても関連が深いと思えるエピソードが出てきます。
少し長くなりますが、引用させていただきます。
p.42「天使が生まれる時」より
・小学校に上がった時
全校生徒が頻繁に僕を見物にやって来た。
心ない言葉も漏れてきた。
そんな居心地の悪い状態から守ってくれたのも
同じ学校の生徒達だった。
(略)
僕をかばってくれた守護天使たちの正体は
保育園で親友になった生徒達だった。
彼らと保育園で出会った当初は
彼らも僕を不思議な様子で見ていた。
よく知らない相手のことを思いやったり優しくするのは難しい。
直接会って話したり遊んだりして
初めて同じ人間だと実感できる。
「インクルーシブ教育」は、障害の有無など、いろいろな違いを包摂して、いろいろな子どもたちが同じ場で共に学ぶ教室をめざしています。
その対義語は、「エクスクルーシブ」=「排除」になります。
日本は、同質性社会と言われ、1人だけ違っていることが、排除の対象になりやすいと言われています。
ただ、人間と人間の相互理解は、幼い頃からずっと一緒にいることで育まれます。
実は、「インクルーシブ教育」以前に「インクルーシブ保育」というものがあるのです。
小学校以前の保育園の頃に、どんな子も受け入れて一緒にやっていくという実践のことです。
こちらのほうが日本では古くから一般的であったかもしれません。
もうひとつ、本書から特徴的なエピソードを紹介しましょう。
本書の主人公ルネくんのお母さんについてのエピソードです。
(本書p68「家族の副音声」)
アフリカから来たお母さんは、日本語をカタコトでしゃべります。
ルネくんと、ルネくんの友だちは、そのお母さんの話を一緒に聞いていました。
しかし、友だちは、後で「半分くらいしかわからんかった」と言います。
息子であるルネくんは、このことに衝撃を受けます。
そして、自分が母親の日本語を理解するエキスパートになっていることに気づくのです。
ルネくんは
「その人と話した時間 共有した時間」の大切さがわかるエピソードです。
だからこそ、「インクルーシブ教育」では、「普段は別の場所にいる者が部分的に交流する」のではなく、「同じ場で共に過ごすことを基本とする」ことをめざすのです。
僕が今書いているブログ記事の記事カテゴリは「共に生き、共に育つ」ですが、
意外にも楽しく笑いながら読めるコミックエッセイのなかのエピソードから、
「共に生き、共に育つ」を考えることができました。
考えるきっかけは、どこに落ちているかわかりませんね。
最後に、これは「インクルーシブ教育」とは何の関係もないのですが、本書でおまけのように最後に紹介されていた、あるテクニックのことも、書いておきましょう。
本書はネット上に公開されたマンガがもとになっているのですが、それが人気を呼び、書籍化されたものです。
人気になった理由はいろいろあると思いますが、著者はネット上で楽しく応援してもらえるように、ある工夫をしていました。
それが、「ジンクス」をくっつける、というものです。
例えば、「いいねがつくとたんぽぽの声が聞こえてきます」(p121)というような言葉がネット上のマンガに添えられていたそうです。
こういう一工夫、いいですね。
僕は「インクルーシブ教育」を全国に広めたいと思っていますが、そのためにあまりまじめになりすぎるのではなく、こういったユーモアを交えながら、楽しくやっていくことも大切だなあと思いました。
では。
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