子どもの心を動かす言葉がけの具体例 ~岩下修『AさせたいならBと言え』
教育書の中でも伝説的な1冊があります。
岩下修先生の、『AさせたいならBと言え』。
タイトルにも、内容にも、「教育者として覚えておきたいこと」の本質が、ここに、ギュッと凝縮されています。
すでに発刊からかなりの年数が経っていますが、今の若い先生方にも、ぜひ読んでほしいと思います。
『AさせたいならBと言え 心を動かす言葉の原則』
(岩下 修、明治図書出版、1988、1386円)
▼出版社公式サイト(現在も継続販売中!!)
若い先生にありがちなのが、Aさせたいときに、Aしなさいと言ってしまうことです。
「勉強しなさい」「姿勢を正しなさい」「掃除をしなさい」「やる気を出しなさい」などなど・・・。
そこには、工夫が何も、ありません。
工夫がなく、直接的な命令で子どもたちを動かそうとすると、先生も子どもたちも、楽しくありません。
言い方を工夫して、やり方を工夫して、楽しく学習することが肝要です。
岩下修先生は、書かれています。
・子どもを動かすとは、「子どもの心を前向きに動かす」ということなのである。
これだけは、常に心しておきたい。
(p204)
子どもたちのやる気がないとなげいているそこのあなた!
(僕も、その一人ですが・・・。)
やる気がない子のやる気を引き出すのが、僕たちの腕の見せどころなのです。
子どものせいにしている場合ではありません。
では、この本の中の記述から、印象的なところを少しご紹介します。
僕は音楽が好きなので、音楽の授業で、先生の指揮に注目させたい時の言葉がけを少し引用してみます。
なお、指揮の事例では、岩下先生は、北岡隆行先生の事例を紹介されています。
(本書には、岩下先生ご自身の事例だけでなく、全国のたくさんの先生方の事例が具体的に紹介されています。)
・(タクトの代わりをしている)先生の人さし指の爪を見なさい。
ここに、みんなの声をぶつけてください。
(p128)
この指示は、「小さな特異点」を示すという原則に基づいています。
子どもの視線というのは、あっちこっちに飛びます。
30人いれば、30人があっちこっち見ているのが、普通です。
その視線を集め、みんなで同じところを見るようにさせるには、
「前を見なさい」では、漠然としすぎているのです。
少し言い方を工夫される先生なら、「先生の手を見なさい」と、見るところを限定されます。
しかし、それでも足りないのです。
本書で紹介されているのは、「人さし指」の、しかも、その「爪」です!
そこまで小さな特異点を示すから、子どもたちはかえってその難しいことに挑戦しようとするのです。
そこまで具体的だから、「やってみよう」という気になるのです。
さて、このブログ記事を書くにあたり、この本の書名でネット検索をすると、なんと、今年になって、この本の「イラスト図解版」が出ていることが、分かりました。
『イラスト図解AさせたいならBと言え 子どもが動く指示の言葉』
(岩下修、明治図書出版、2022/5、2310円)
この本が紹介されていたAmazonでの「出版社からのコメント」が、大変シンプルでした。
教師になったら必ず読みたい!
説明不要の名著だからこその、出版社コメントですね。
さあ、あなたも、「Aさせたいなら、Bと言え」を実践して、
楽しい教師生活を、送っていきましょう!